私は占星術の講師をしていますが、元受講生の美紀さん(仮名)から、このようなご相談を受けました。
『私は悩みが多く、若い頃からスピリチュアルに依存気味でした。生活がにっちもさっちもいかないわけではないけれど、問題の原因は何なのか?気になって‥』
『最近また、スピリチュアルと占星術をしている先生と接点があったのだけれども、自分の悩みをしっかり伝えのにも関わらず、ひと悶着して‥』
悩みが深いと、スピリチュアル的な意味ではどうなのか、気になる方が多いと思いますが、
ここでは敢えて、スピリチュアル的に、このようなことは、こういう意味があるよ、ではなく、
スピリチュアルのコーチやヒーラー、そしてクライアントとの関係性や、理論の構造的な部分から、悩みのタネを紐解いてみたいと思います!
◆「自己解放していない」という便利な言葉
相談の中心となったのは、
占星術師A先生と、スピリチュアルコンサルタントB先生についてです。
A先生は占星術師として一定の理論背景を持ち、「月」や「IC(4ハウス)」を重視する読みを行います。
B先生は「感情を感じ切ること」「自己解放」を掲げるスピリチュアル系カウンセラーです。
美紀さんは当初、A先生から紹介されたB先生のセッションも受けましたが、次第に、双方に違和感を覚えるようになります。
美紀さんは自分なりに感情を言語化し、丁寧に内省した内容を提出していましたが、次第に生き方そのものを否定される形になっていきます。
そして、グループセッションでも、誰に対しても似たような問いが投げかけられていることに気づきはじめました。
美紀さんが強く違和感を覚えたのは、
セッションが行き詰まったとき、必ず同じ言葉に回収される点でした。
- 「まだ自己解放が足りない」
- 「感情を感じ切れていない」
- 「もっと手前の幸せを見られないのか」
これらは一見、深い内省を促す言葉のように聞こえます。
しかし構造的に見ると、非常に便利な言葉でもあります。
なぜなら、
クライアントが違和感を訴えた瞬間に、
問題は“私が与えたこと”ではなく
“あなたの理解不足”だ
という構図にすり替えられるからです。
スピリチュアル系のコーチやヒーラーの現場も含めた、教える/教わるがある関係では、
「扱いにくいクライアント」に対して、このような言葉が使われる傾向があります。
教える側が、自分の見解に盲点がないと(無自覚に)思い込んでいるときほど、これが起こります。
納得しない
疑問を持つ
言語化ができる
理屈を理解しようとする
こうした態度は、とくに
「感情に委ねること」を前提とした場では、
しばしば“未熟さ”や“抵抗”と解釈されてしまいます。
普通に考えると、高い知性の現れのはずなのですが、
自分の腕前を棚に上げて、
“あなたの解放不足”ということになってしまう。
◆『先生』と呼ばれることの弊害
美紀さんは、輝かしい経歴を持った方です。おそらく、どんなに有名な占い師やヒーラー・コーチでも太刀打ち出来ません。
私のクライアントには、びっくりするような方がちらほらいます。そしてなぜか、ほかの人以上にスピリチュアルに傾倒していることがあります。世の中の全てを手に入れているように見えるのにも関わらず。
ここからは、私の推論です。
まずは、ある程度の物事を得ている人のほうが、もし一般的な人よりも、身も時間も粉にしてやってきたとしても、
『全てを解決するものを探し求めやすい』傾向があります。切り拓いてきたゆえに、解決策が無いと言う経験をあまりしてきていないからです。
その行きつく先がスピリチュアルであることが、よくあります。
芸能人の方でよくハマる方が多いのも頷けます。
そして、占い師やコーチ、ヒーラーになる人は
『何らかのトラウマや挫折経験を持っている』
『普通の仕事で何かしらの障害がある』
そんな人が多いように思います。私もそのうちに入ります。
それでも、下手すると、美紀さんのような凄い人にまで『先生』と呼ばれる身になれるのです。
私が思うのは、まず、自分の大切な事を吐き出す事は、とても大変だということです。
人様に対して、『まだ自己解放が足りない』などと、言うものではありません。
己の専門用語ではなく、魂でぶつかるべきです。
◆IC・月・キロンは「万能の答え」ではない
話をようやく、占星術枠に戻します!
スピリチュアル系の先生方の言葉の背景には、
占星術由来のイメージが混ざっていることも少なくありません。
(名前が『占星術』でも、内容がかなり違います)
たとえば、スピリチュアル系や心理系のアプローチによく出てくるのは、
- IC(4ハウス)=心の奥・無意識・安心できる場所
- 月=感情・母性・内側の欲求
- キロン=心の傷・癒されていない痛み
これらを重ね合わせることで、
ICが開いていない
月を生きていない
キロンの傷と向き合っていない
という語りが作られます。
しかし、本来の西洋占星術において、
月もキロンもICも、万能の診断装置ではありません。
【IC】
ホロスコープの一番深い場所で、誰にとっても重要であることは間違いないですが、
ICを解決しないと進めないような問題は、深追いすると逆に良くないことが多いです。
人は仕事場や友人関係、社会的役割の中でも、
十分に「居場所」を持つことができます。
社会(MC)に適応していない状態が、ICです。
ICを使う時間は自然と長いものになりますが、
ICだけを見つめ続けて生きる必要もありません。
大切なのは、ICは「実家」や「親」だけを指すものではありません。
独り暮らしの自分の部屋、
誰にも評価されない時間、
社会的役割を脱いだあとの自分も、すべてICです。
固定した場所ではなく、「ライフステージで更新がある場所」だということを、お忘れなく。
(IC・4室が悪い場合は、それ以外の強み・楽しみを持つことが大切です)
【月】
月の存在は、長い時間をかけて地球の自転や環境を安定させ、
私たちが生きられる条件そのものを支えてきました。
(天体力学では、潮汐摩擦によって地球の自転がゆっくりになっていったと考えられています)
月の傾向とリンクする感情を感じることは大切ですが、
感情に飲み込まれ続けることが、開放や癒しになるとは限りません。
月とリンクする気持ちは、自分自身を守っていますが、じつは、気持ちは自分のうちの一部であって、自分の全てではないのです。
なぜなら気持ちは、その時々の環境や状況で、ころころと変わります。月の色や形や様子が、いつも違うのと同じように。ときに気持ちが自分を惑わすことだってあるのです。気持ちに振り回されない事が大切です。
(内観の方法として、自分の気持ちの流れを、意味も分析も付けずにただ観察する、というのがあります。おすすめです。)
【キロン】
キロンに至っては、そもそもが特殊領域を司るので『誰もが使っているような天体ではない』と言えます。
ネイタルで重要なアスペクトを形成している等がない限り、あまり扱う必要のない天体だと考えます。
(それよりも10天体のことを考えるべきです)
心の傷を見るのであれば、月や小惑星(セレス・パラス・ジュノー・ベスタ)のほうが明確に出るでしょう。
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これらがすべての問題の原因であるかのように語られるとき、
占星術の言葉が、納得させるための言葉に、とって変わってしまいます。
◆「手放し」が苦しくなったら、
何かを手放すときはきっとその前に、
それを何度もしっかりと握りしめていることでしょう。
それを世の中では執着と言いますが、それは、様々な思いを背負っています。
解放とは、
過去をなかったことにする行為ではありません。
執着という、貴方の思いが積み重なったものを、簡単には無視できません。
それを抱えたまま、立てる場所を見つけてほしいです。







